日に焼けた古い畳の床から少し上がった出窓の磨ガラス窓を開けると石垣沿いの曲がりくねった道を眺められる。駅からタクシーに乗り古民家までと言うとだいたい向こうにみえる入口付近で降ろしてくれる。
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 タクシーを降り石垣沿いの道を歩いて行くと白い土蔵の奥にそれほど大きくはないが形の良い平屋の民家が見えてくる。紅葉したのむらモミジの下の陽当りのいい縁側、ここでまったりするなら午前中が良い。今回は縁側には行かず昭和の雰囲気の残る別の場所へ廻る。
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 天気が良いと先程見ていた玄関横の茶の間の窓が開いている。外から覗くと丁寧に造られた造り付け仏壇と奥には土間の台所もみえる。右手の離れには古いタイル貼りの風呂と外便所の棟がある。その間の幅半間ほどの通路を入って行くと真鍮製のドアノブが付いた勝手口の扉がある。この辺はトトロっぽいとよく言われる場所だ。
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 勝手口から丸いちゃぶ台が置かれている茶の間に上がる。この時代の家族団らんは朝日のあたる四畳半の畳の部屋がお決まりだ。東側の磨ガラスの窓を開けると先程入ってきた通路がある。ご近所の来客とちょっと話すのに丁度いい高さの窓だ。コンビニがない時代『ちょっとお醤油貸して・・』切らしたものは近所に借りに行くのは日常的だった。
 離れの風呂場にもいちいち雰囲気のいい木製扉が付いている。寒い冬には扉の隙間から白い湯気も昇っていたはずだ。『おーい石鹸持ってきてくれー・・・』s_DSCF6102fng
 茶の間から振り返ると陰影のある障子戸の向こうに先程の縁側が見える。朝の日当たりがいいこの場所は、優しいおばあちゃんが座布団の上で日向ぼっこしていそうなところだ。 
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 茶の間からの情景と昭和の気配を感じる空間  空間saisei 代表:増山雄一